こんにちは。八百屋テクテクです。
今回は、スピッツ「オパビニア」について解釈していきたいと思います。
曲のタイトルになっているオパビニアですが、どんな生物なのかはご存知でしょうか? 私はスピッツの、この曲名から存在を知ったクチなのですが、私の妻は古代生物が昔から好きで、すでに存在を知っていました。彼女は私に、オパビニアの特徴について教えてくれました。
「オパビニアは、学会で発表された時、その形の可笑しさから爆笑されたんだよ」
「オパビニアは、子孫を残すことなく滅んでいるんだよ」
これを聞いた時、なるほどな!、と思わず言っちゃいました。
どうしてマサムネさんが「オパビニア」を主題に曲を作ろうとしたのか、なんとなくわかったからです。
たぶん、ブサイクな男の恋を描きたかったのかなと。
恋愛というのは、美男美女同士のものになりがちです。ドラマなどでは、ブサイクによる恋愛がテーマになっているものを除いて、そうなっています。ブサイクの恋愛を描こうと思った場合、何か能力なり、お金なり、地位なりといった、モテる根拠を描くことになるでしょう。何も持たないブサイクな男を無条件で愛してくれる女性というのは、ドラマの設定にするには、無理があるようです。
現実社会においても、そうでしょう。ブサイクな男を無条件で愛してくれる女性は、いなくもないんですけど、やはり少しでも条件のいい男性とお付き合いしたいと願う女性は、多いのではないのでしょうか。そういう意味では、ブサイクは、イケメンやフツメンに比べて不利な条件を背負っていると言わざるを得ないでしょう。
こんな、ブサイクな男が恋をしたら、どうしたらいいんでしょう?
歌詞中の男性は、「男」というぐらいの年齢に達していますので、自分の立ち位置というのをわきまえているのでしょう。自分はブサイクなので、女性には好かれない。せめて嫌われないよう、目立たないよう、距離を保っていよう……。イケメンと美女たちが仲良く乳繰り合っているのを横目に、自分の世界にひとり静かに浸る日々を送っているのが、主人公の男性です。ましてや、主人公のブサイク具合はどんなものかというと、周囲を爆笑させてしまうような、まるでオパビニアのような存在。そう、自覚しています。
この、恋愛にとっては圧倒的不利な条件を抱えた男性ですが、この詞で気になる人と巡りあったようです。
はたして、どうなってしまうのか。
歌詞を眺めながら、見ていきましょう。
巡りあいはただあくびもらったあとの
両目閉じる感じのヘタなウィンクからどれくらい?
あくびというのは、緊張している状態では発生しないという特徴があります。また、あくびがうつる、という現象は、緊張しない相手からしか貰うことがないと言われています。
この男性の目の前にいる女性は、男性の前で緊張しない女性だったのです。すべての男性に対してそうなのか、この男性に関してのみなのかは、わかりませんが、とにかく女性は、このブサイクな男の前で、気を許して、とてもリラックスしていたみたいです。あくびをしたのは男性で、あくびを貰ったのは女性のようです。女性はあくびをした後で、両眼を閉じる感じのウインクを、ブサイクな男性に対してして見せました。照れ隠しなのか、なんなのか、意図はよくわかりませんが、とにかく女性は、そうしたのです。
ブサイクな男性にとっては、これがいかに衝撃的なことか。ほとんどの女性は、自分との関りを持たないよう、自分を避けていたし、自分もまた積極的ではなかった。でもこの女性は、自分に対して気を許した感じで、ウインクまでした。普通の人にとってみれば内容の薄いエピソードかもしれませんが、恋愛事の経験の薄いこの男性にとっては「これは巡りあいだ」と思わせるには十分な内容だったでしょう。砂漠で一滴の水を得るがごときの、出来事だったのです。
誇り高きあのオパビニアの子孫
俺は生きていた妄想から覚めてここにいた
オパビニアは、子孫を残すことなく滅んでいるとされています。ヒトの系譜はオパビニアからではなく、サルです。なのでここでの「オパビニアの子孫」というのは、「僕がブサイクなのは、サルではなく、オパビニアの子孫だからだ」と言いたかったのかもしれません。「誇り高き」とありますが「お前たちとは違うんだ。僕はひとりで生きていくさ」と、妙なこじれ方のおまけつきで。
でも、当然ながらそんなことはありません。この女性と出会ったことで、妙な妄想から覚めています。「ああ、僕もサルから進化した人だったわ…」と自覚します。
意味は無いのかもね だけど幸せ
つながった時には
「つながった時には」とは、例えばラインでこの女性と友達になった時のことだと思います。ツイッターで相互フォローでもいいでしょう。とにかく、自分のスマホの連絡先一覧に、彼女のアイコンが出現している状態のことを指しています。もちろん、相互フォロワーになっただけでは意味がなく、そこからメッセージを送りあったりして関係を深めていくことが大事なのです。でも、彼女のアイコンを眺めるだけで、繋がっているような気分に浸っています。「意味は無いのかもね だけど幸せ」なのです。
デートに向かない坂道を 君の手を引いてかけ上がり
恋も希望も取り返す バレたってかまわない
サビまでの流れでいうと、オパビニア男は、「君」とは付き合っていないばかりか、とくに込み入った話はしていない状態だと思います。せいぜい、挨拶を交わす程度か、天気の話をする程度の、すごく浅い関係性でしょう。
じゃあこの「君の手を引いてかけ上がり」とは何かというと、男の妄想です。
直後に「バレたってかまわない」と言っています。「君」に恋してしまっていることが、バレてもかまわない、と言っているのです。この気持ち悪い妄想が、バレでもかまわないと言っています。
恋も希望も諦めて、孤高に生きていく決意をしていたけれども、「君」に恋したので、「恋も希望も取り返す」と決意したのです。
この場面にて、男は何をしているのかというと、ダイエットのためランニングしているんじゃないかなと。なので、デートに向かないけれど、走りこみには向いている、登坂車線のあるような無骨な坂道を、ひとりでダッシュしているんです。気持ちが辛くなったら、君の手を引いているような妄想をして。
穴あきの服で 風を感じた日々が
砂ぼこりの中 もがいてた日々が色づいた
ここは、オパビニア男が「孤高だった頃」の表現です。恰好なんて気にせず穴あきの服を着ていたこともあったし、砂ぼこりにまみれる、カッコ悪い姿をさらし続けていた時期もありました。
それが、色づきました。「恰好を気にしてみよう。ファッション雑誌見よう」とか、自己改善に向けて努力をしている様子がうかがえます。
愛されたいとか どうかしてるかも ガラじゃないのに
イカした贈り物 探してる
「ガラじゃないのにイカした贈り物探してる」と、ここも苦手意識のあることに手を出そうとしている様子です。彼女に気に入られようと、少しでも自分の状況を改善しようと努力している様子がうかがえます。
にぶい男でも さすがにわかった
盗まれていたこと
「孤高」を気取っていた彼が、今は女性に気に入られるために四苦八苦しています。この状況をふと客観的に眺めた時、さすがに男性は気が付きました。
「ああ、心を彼女に盗まれたんだなぁ」と。
操縦できない心から 解き放たれたフワフワで
近所も遠くもいとおしく つくり歌もこぼれて
あそこへとつづく坂道を 息を切らしてかけ上がり
恋も希望も取り返す ちょっとやそっとじゃ終われない
サビは、ずっと近所も遠くも走り回っている場面です。ランニングって、ダルいですよね。私は高校時代陸上部で長距離走をやっていたんですけど、そんな私ですら、今、毎日ランニングしてね、って強制されたら、絶対に嫌っていいます笑 だってダルいし、面倒なんですもの。
でも、このオパビニア男は、恋に浮かれてしまっており、それが走る動力になっています。ラインの画面上に、彼女のアイコンがあるのが嬉しくてたまらないんです。それだけで、「解き放たれたフワフワ」になっちゃうんです。
「あそこへと続く」とありますが、この坂はいったい、何に続いているのでしょう? たぶん彼女に関係するものだと思うんです。彼女の家か、彼女の学校か、会社か、よくいくお店か……。そんなところでしょう。その店なり学校なりを通りかかった時、もしかすると彼女とすれ違うことがあるかもしれません。それを期待して、ランニングコースにあえて体力的にキツい坂道を通るルートを選んでいるわけです。
「ちょっとやそっとじゃ終われない」と、一念発起してダイエットにいそしんでいます。
という感じで解釈してみましたが、いかがでしたでしょうか?
恋愛を原動力にして頑張れるのは、基本的にはいいことだと思います。オパビニア男は、彼女に恋愛をし続けている限りは、ずーっとランニングし続けて、めちゃめちゃ足が速くなることでしょう。足が早いことは恋愛のステータスとしては直接的には有効なものではありませんが、足が速くなったとで自信につながって、自分のブサイクさを覆す結果になるかもしれません。
最後の結末を書かないところが、マサムネさんらしいところです。
ブサイクな男が浮かれている場面を切り取って、絵にした。
身も蓋もない言い方をしてしまえば、そんな表現になってしまいますが、それもまた絵になるのが、マサムネさんのすごいところでしょう。
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