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八百屋さんがおすすめする、デザートテクニック。

目次



★はじめに

こちらの項目では、果物のことを知り尽くした八百屋さんが教える、デザートテクニックをご紹介しています。

個別の紹介に入る前に、今の果物事情を少しお話したいと思います。というのも、今の果物は品種改良がかなり進んでおり、そのままの状態で美味しく食べられるものが、とても多くなりました。なので、昔からのやり方を踏襲していたのでは、バランスが悪くなってしまう可能性があるのです。

昔は、例えば酸味の強いイチゴに練乳をつけて楽しんだり、酸っぱい柑橘をジャムにしたりして楽しんでいましたよね。フルーツに十分な甘みを添加することで、酸味、甘み、香りのバランスを調整していたわけです。ショートケーキに乗せた一粒の酸っぱいイチゴが、甘いケーキをしっかりと引き締めてくれていました。

今は、酸っぱいイチゴがないわけではありませんが、八百屋さんとしては、どうせなら、最新の美味しいイチゴを味わってもらいたいなと思っています。そして、そんな美味しいイチゴをデザートの主役として出演させるのであれば、イチゴが持っている甘さ、香り、酸味を邪魔してしまわないよう、調整してあげる必要があるのです。




★いちご

かおり野イチゴのフルーツサンド

大きいイチゴが手に入ったら、まずはぜひ、イチゴサンドをやってもらいたいです。

イチゴサンドに入れるときのイチゴは、とにかく新鮮なものを選びましょう。パキッ、パキッ、とした歯ごたえが楽しめますし、なにより新鮮なものは香りがいいです。品質のいい、新鮮なイチゴを手早くサンドして食べることができれば、どんなお店で売っているイチゴサンドよりも美味しいものが出来上がります。そのぐらい、イチゴの品質の差が出やすいデザートなのです。

このイチゴは、1月中旬より出回る、かおり野いちごを使用しています。文字通り、かおりが大変豊かなイチゴで、大粒になりやすいという性質もあります。材料はホイップクリームと、パンのみ。ホイップは、すでに泡立ててあるやつが使いやすいです。冷蔵品もありますし、冷凍品もあります。イチゴが大きいので、そんなにたっぷりホイップを使うことがありません。その点でも、使いやすいですね。




いちごケーキ

クリスマスケーキのカタログを眺めてみると、「イチゴの」と銘打っているケーキでも、イチゴがあまり乗っていなかったりします。もしかしたらお店の人が「イチゴは酸っぱいから、あまり乗せすぎると美味しくないし、遠慮しておこうかな」と配慮してくれた結果なのかもしれません。実際、酸っぱいイチゴもありますから、難しい話ですよね。

でも、美味しいイチゴが手に入ったら、そんな遠慮はいりません。スポンジケーキを買ってきて、思う存分、イチゴをデコレーションしちゃいましょう。

熊本県産のゆうべにイチゴは、熊本県のオリジナル品種です。甘みと香りが素晴らしく、そこに適度な酸味があり、イチゴとして大変バランスがいいイチゴです。八百屋テクテクは、ゆうべにイチゴが手に入るうちは、好んでこのイチゴを使っています。



クリスマスケーキ

こちらは、クリスマスの時期に作ったケーキです。クリスマスのある12月末頃は、まだイチゴの生産が本格的でないことに加えて、多くのお店さんがケーキのためにイチゴを欲しがるので、イチゴの需給のバランスが非常に悪い時期なのです。そういう時に無理してイチゴを求めると、高額のわりに品質のよくないイチゴをつかまされたりして、失敗します。このケーキの上のイチゴも、「まあいいかな」と妥協して調達してみましたが、先のケーキのイチゴと見比べてみると、違いが歴然だと思います。

いいイチゴが手に入った時には、イチゴを使いますが、他にも美味しい果物が沢山あるので、無理して使うことはありません。



イチゴの生春巻き

カルディのライスペーパーを使っています。ライスペーパーに、チョコとイチゴを巻くだけ。これで見た目も美しい、美味しいデザートが出来上がります。



イチゴ大福

大きな、かおり野イチゴを使っています。普通のイチゴ大福は、小さくて酸っぱいイチゴを使うことで、餡子の甘みとのバランスがよくなっているんですけれど、かおり野いちごは酸味が穏やかなので、これだけ大きなものを使っても、バランスを損ねることはありません。むしろイチゴの香りが大変すばらしい、最高のイチゴ大福になります。



冷凍イチゴ

イチゴは、鮮度劣化が非常に速い果物です。イチゴの樹に最初に成るイチゴは1番果といい、イチゴの樹からもっとも栄養を貰っているイチゴです。それから2番果、3番果と、成るイチゴが増えるにつれて、ひとつあたりが貰える栄養がだんだん落ちていき、4月以降の、暖かくなってきた頃に出回るイチゴは、5番果、6番果くらいになります。収穫した直後でも、疲れているイチゴになるわけです。こういうイチゴは、買った翌日には溶けていますので、その日に食べられないイチゴは、冷凍しちゃいましょう。冷凍したら、冷凍のまま食べてください。ひとつをまるまる凍らせると食べにくいので、食べやすいサイズにカットしてから冷凍してください。もちろん、大粒の冷凍イチゴもまた、かっこいいですけれども。



イチゴジャム

イチゴジャムを作るのなら、3月~5月頃をお勧めします。その頃になってくると、イチゴの値段が下がってきて、ある程度の量のイチゴを買いやすくなるからです。また路地のイチゴや、家庭菜園のイチゴが出来上がってくるのもこの時期ですが、酸味がある程度ある品種になりますため、この性質もまたジャムに向いているということになります。

写真は、ちょっといいイチゴを使っちゃっていますが、安いものでかまいません。ただし、鮮度のいいものを選びましょう。鮮度劣化すると、酸味や香りが落ちてしまいます。



ドライイチゴ

イチゴジャムと同じ時期に試してもらいたいのが、ドライイチゴです。生で食べるなら1~3月、加工するなら3~5月を目安にするといいでしょう。

ドライイチゴを、チョコサラミにしています。ちゃんとイチゴの風味が感じられて、かつデメリットになりがちなドライのグニグニした口触りも、上手く昇華できています。ドライにしたイチゴは、チョコサラミの中に入れるのが、個人的にはもっとも美味しい食べ方だと思います。




★柑橘


紅まどんなのチョコレートケーキ

柑橘、とひとくちに言っても、その性質は多岐に渡ります。皮が剝きやすくあっさり食べやすい「みかん」もあれば、皮が美味しいお菓子になる「オレンジ」、新しい柑橘「デコポン」、皮ごと食べられる「キンカン」、苦みが特徴の「グレープフルーツ」、そのほか、香味野菜として使われる「ゆず」や「レモン」なども、柑橘の部類です。こうしてみると、味はもちろん、使用方法もたくさんありますね。

その中でも、八百屋テクテクが一番おすすめしたいのは、「一番美味しい柑橘」と「チョコレートケーキ」の掛け合わせです。酸味と香りがいい柑橘は、チョコと相性がとてもいいので、その組み合わせの中でも最高のものを選んでみたいなと。写真は、愛媛のオリジナル品種である紅まどんなが使われています。紅まどんなは、甘さはもちろんのこと、香り、ジューシーさ、味の濃さなど、柑橘の可能性を突き詰めた、現時点で最高と思われる柑橘です。




柑橘ジャム

ジャムにする場合は、苦みの少ない皮を使うことが重要です。オレンジのマーマレードジャムが一番ポピュラーなのは、食べやすいからなんですよね。赤い皮の柑橘は苦みが少なく、黄色い皮の柑橘は苦みが多いです。なので、ジャムにする場合は、赤い皮のものを使いましょう。

なお、あえて苦いジャムを作って、お菓子の味の調整のために使う、なんて使い方もあります。特性を踏まえて、上手な使い方をすることが大事ですね。



文旦のほろにがケーキ

上記で紹介しました、ジャムを生地に入れたケーキです。文旦の苦さと香りが、ケーキの味に深みを与えてくれます。




★りんご

焼きリンゴケーキ

りんごは、★はじめに にて述べました通り、生食で美味しい品種の研究がもっとも盛んな分野です。言い換えれば、加工して美味しいリンゴが少なくなっている分野でもあります。りんご単品で完結されているので、他に甘みなどを追加する必要性がなくなっているのです。もし、焼きリンゴなど、加熱したりしてリンゴのお菓子を作りたいのであれば、酸味があるリンゴを使いましょう。昔ながらの、紅玉りんごがおすすめです。もっとも、紅玉りんご出回る時期は大変短いうえ、年々生産量が減ってきておりますので、難しいことには変わりないですが…。



季節のフルーツケーキ

もしくは、いっそのこと、ほとんど何も手を加えずに美味しく食べられる方法を模索するのが、昨今のリンゴに対しては有効かもしれません。フレッシュなリンゴの切り身をケーキに散らせば、立派な美味しいケーキに仕上がります。あれこれと手を加えなくても美味しいというのは、ありがたい話ですね。なお、リンゴは切ったらすぐに酸化して茶色くなるので、レモン汁、塩、砂糖などでコーティングしましょう。




★メロン

まるごとメロンケーキ

生のメロンを手に入れたら、器を有効活用することをお勧めいたします。メロンはコンビニやスーパーなどのカットフルーツによく入っているので、口にする機会はずいぶん増えたと思います。だからこそ、生のメロンを手に入れたら、いつもとは違う食べ方をして、ぜひ非日常感を味わいましょう。頭を落として中をくりぬいて、メロン果肉と生クリーム、スポンジを重ねていって、最後に縦に割るとこうなります。本当はもっときっちり断面ができあがるはずでしたが、メロン果肉がおおぶりすぎて、隙間が開いてしまいました。細かく丁寧な仕事をするって、大事ですね。



フルーツポンチ

季節のフルーツを入れて、最後にソーダを入れます。これはコンビニやスーパーではまず手に入らず、ケーキ屋さんや喫茶店でも難しいでしょう。とても特別感がありますね。



メロンのバニラアイス乗せ

ぜいたく、かつ簡単なメロンの食べ方をするなら、こんな食べ方がおすすめです。味の薄いメロンのカバーをするためにバニラアイスが使われがちなんですけど、ちゃんと美味しいメロンでもアイスは合います。ちゃんと熟したメロンならアイスクリームの存在感に負けず、しっかり融合してくれます。



メロンサンド

メロンを豪快にサンドしてみてはいかがでしょう? 市販のメロンサンドは、断面は綺麗ですが、竜頭蛇尾になりがちです。でも自分で作るなら、入れ放題です。表も裏も、メロンたっぷり入れちゃいましょう。




★スイカ

スイカとキウイの杏仁豆腐

スイカは水分量が多く、他のフルーツとは違って煮たり焼いたりできません。自然と、そのままカットして食べることが多くなるフルーツだと思います。また、1玉が大きいので、食べるときはスイカのみになり、何かを掛け合わせるという発想は生まれにくいのかなと。

ただ、鮮やかな赤色を持っているフルーツが、スイカ以外に時期的にありません。食欲が減退するこの時期、スイカの赤色が食欲の助けになってくれることでしょう。大事にしていきたいですね。



スイカミルク

これも、スイカの鮮やかさを活かした例です。あまり入れすぎると水っぽくなってしまうので、加減が大事です。




★マンゴー

宮崎産マンゴーヨーグルト

マンゴーはみなさん、そのまま食べていると思います。マンゴーこそ完璧な果物で、ほかに加工する余地がありません。変に加工すると、かえってマンゴーの良さを殺してしまいかねません。これは趣味嗜好もあるんですけれど、マンゴーは適度に酸味があるものが、味にまとまりがあって美味しいです。台湾産アップルマンゴー(アーウィン種)や、タイ産のペリカンマンゴーなどです。メキシコやペルー産はキーツマンゴーといい、緑色の部分が多いマンゴーとなりますが、ちゃんと熟しています。これらはそのまま食べるか、酸味が強く感じる場合はアイスを添えてもいいでしょう。

一方で、宮崎産のマンゴーは甘みと香りに特化しています。私たちは最高級の大トロをお寿司にして食べるように、その濃厚さの受け皿となってくれるものがあると、より一層美味しく食べられるでしょう。ヨーグルトと混ぜると、その美味しさを最大限に味わえる、大変贅沢な食べ方になります。



★桃

桃タルト

桃のデザートは、難易度が高いです。なぜなら、綺麗にカットするには、カットに適した品種、熟度でなければなりません。これを間違えると、切ってる最中からグニョグニョになります。また、切ってすぐに処理しないと、酸化して茶色くなってしまいます。家庭でやるには、難易度が高いですよね。もしチャレンジするなら、あかつき桃や川中島といった、8月後半以降に登場する、固い桃を選ぶといいでしょう。アボカドみたいに種がくるりと離れます。逆に、早い時期の桃は果肉が柔らかく、アボカドみたいな処理をすると、潰れます。




★洋梨

ル・レクチェのタルト

最高のフルーツの一つです。時期が非常に限定されているうえ、すぐに傷んでしまうので、手に入れるのが困難です。でも、このル・レクチェを味わってしまったら、多少困難してでも手に入れたいと思ってしまうことでしょう。

ル・レクチェに限らず、洋梨を手に入れたら、ぜひケーキなどの上に乗せてみてください。洋梨もリンゴなどと同様、酸化しますので、綺麗でいられる時間が非常に短いのです。なので、ケーキ屋さんで生の洋梨のケーキをなかなか見かけないのは、そのためです。家庭でしかできない、贅沢なケーキなのです。



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