こんにちは。八百屋テクテクです。
今回は、スピッツ史上最大のナゾである、「Y」の意味について考えてみようと思います。
「Y」って、なんなんだ、とスピッツファンなら、一度は考えたこと、あると思います。歌詞もなんだかすごく意味深なものだけど、何を意味しているのか、よくわからない内容です。たぶん悲しくて辛いというのは、曲調からは伝わってきますが、それはそのまま絶望を表しているのか。それとも絶望からの希望を示唆したものなのか。……
そして、「Y」というタイトルは、いったい何を表しているのか。……
私の解釈になりますが、これは応援の曲です。
そして、「Y」とは、応援「YELL」のことです。
だけど、ただの「がんばれ~~」っていう、応援ではありません。
悲しげな曲調に沿うように、絶望のふちに立たされた人々を慰めるような、そんな曲なのです。
小さな声で僕を呼ぶ闇へと手を伸ばす
静かで長い夜
慣らされていた置き去りの時から
這い上がり無邪気に微笑んだ 君に会うもう一度
曲の最初は、絶望からはじまります。
この曲はAメロとサビに分かれていますが、Aメロとサビの意味するところは全く違っています。だからこそ、Aメロが過ぎてサビになったら、もう二度とAメロには戻ってこないのです。その意味がとても重いものになっています。
どういう状況かというと、これは災害直後を表しています。
この曲が収録されているアルバム「ハチミツ」に収録されている、スピッツ最大のヒット曲である「ロビンソン」は、国内最大級の震災である阪神淡路大震災が起こった年に発表されました。この未曽有の出来事は、マサムネさんの心に深い影を落としたことは、後々発表されたのインタビューなどで知ることができます。
この「Y」もまた、震災の影響が色濃くでている曲だと、捉えることができます。
震災のあった夜。「僕」は、家の下敷きになってしまった彼女を救出するために、瓦礫を必死にかき分けているところから、曲がはじまります。
その時、瓦礫の中から、小さな声で僕を呼んでいたのは、彼女の飼っていた小鳥です。
飼い「ならされて」おり、置き去りのようになってしまった小鳥。瓦礫の「闇へと手を伸ば」して救出したところ、小鳥はこの事態を把握していないのか、僕に対して無邪気に微笑むような顔をしています。
しかしながら、この小鳥が発した「小さな声」以外の声は、瓦礫の闇からは聞こえてこない「静かで長い夜」でした。長い間そこで救助活動をしてみたものの、何も聞こえてこない、静かな夜だったのです。つまり、彼女自身は、残念ながら、瓦礫の下で冷たく息絶えてしまっていたということです。
強がるポーズがよく似てた二人は
弾き合い その後引き合った
生まれた頃と変わらない心で
触ったら すべてが消えそうな君を見つめていた
ここでの「二人」とは、僕と君の二人ではなく、君と小鳥のことを指しているんじゃないかなと。
というのも、この後のサビで「君は鳥になる」と続いています。この君が飼っていた小鳥と、君が、よく似ている存在だと僕が感じたんじゃないかなと。ペットは飼い主に似る、と言いますし。そんな小鳥が、君の魂と「弾き合いその後引き合った」ことで同化して、僕の前に現れてくれた、という解釈は、どうでしょう?
同時に、そういう思考に傾かざるを得ないぐらいに、僕の心は繊細になっています。「触ったらすべてが消えそうな」とは、小鳥の中に君の魂があると信じたがっている僕の気持ちです。小鳥に安易に触れたりしたら、君の魂が四散して、消えてなくなってしまうでしょう。この時までは、小鳥をじっと見つめることしか、君を喪って絶望に打ちひしがれている僕にとって、できることがなかったわけです。
やがて君は鳥になる ボロボロの約束 胸に抱いて
悲しいこともある だけど夢は続く 目をふせないで
舞い降りる 夜明けまで
サビです。
ここでの「君」は、小鳥のことです。つまり、小鳥が鳥に成長したんですね。
僕はこの成長した鳥を、大空に放つことにします。「ボロボロの約束」とは、今となっては叶えることができなくなってしまった約束、つまり彼女と誓った何かでしょう。「結婚しよう」とか「一緒に暮らそう」とか。
でも、落ち込んでいる僕に対して、鳥は、自分の手から離れて、大空に羽ばたいていきます。鳥と同化しているはずの彼女の、雄々しく力強く羽ばたいていく姿。そんな彼女の姿を眺めて、僕は「生きている人は、夢を追いかけなくちゃいけない。それを君が教えてくれたんだな」と悟ります。そんなシーンだと思います。
鳥となった彼女が、夜明けに向かって羽ばたくことで、僕に「YELL」を送ってくれたんだ、というシーンだと思います。
やがて君は鳥になる ボロボロの約束 胸に抱いて
風に揺れる麦 優しい日の思い出 かみしめながら
つぎはぎのミラージュ 大切な約束 胸に抱いて
悲しいこともある だけど夢は続く 目をふせないで
舞い降りる 夜明けまで
「風に揺れる麦 優しい日の思い出 つぎはぎのミラージュ」どれも、彼女が生きていたころの、僕との思い出です。どれも美しい風景ばかりで、僕の胸を締め付けてきます。
でも、悲しみに打ちひしがれるAメロはもう巡ってきません。この曲の最後は「夢を追いかけて飛び続けて、夜明けに舞い降りる鳥」の姿で終わっています。
マサムネさんの、強いメッセージ性が、感じる部分となっています。
いかがでしょうか?
「Y」のナゾに、少しでも迫ることができているでしょうか?
ちなみに、この「Y」が発売された当時、同時期に活躍していたアーティストで、DEENがいたんですけど、彼らのヒット曲に「翼を広げて」という曲があります。
「翼を広げて 旅立つ君に そっとエールを送ろう」というサビです。
これは震災で彼女を喪ったとか、そんな曲ではないとは思うのですが、翼を広げているところと、エールを送っているところが不思議と似ていて、面白いなと。
DEENの「翼を広げて」のリリースは1993年だったので、「Y」の発表はその後になります。
もしかすると、マサムネさんはこの曲に「エール」という名前をつけたかったのかもしれません。でもそうすると、エールと、翼を広げて旅立っている点がDEENと似てしまう(中身は、まったく違うんですけど)ので、あえて「Y」というタイトルにして、わかりにくくした、のかもしれません。
信じるか信じないかは、アナタ次第! という感じで締めくくっておきますね……。
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