こんにちは。八百屋テクテクです。
今回は、スピッツ「遠吠えシャッフル」について解釈していこうと思います。
この詞は、いったいどんな内容を歌った曲なのでしょう? 素直に解釈しても、よくわかんないと思います。
でも、「なにかをつかまえたい、無駄な抵抗だと思っていても、穴を穿ちたい」という願望だけは、伝わってくる詞となっています。
それから、「正義」とか「クニ」とか、スピッツが得意としている恋愛のジャンルとは、あまり合致しなさそうなワードが散りばめられています。これは、恋愛の曲ではなさそうですね。
このことから、これは、社会派の曲なんじゃないかなと。もっと言えば、国政選挙における投票行動に関する詞なんじゃないかなと。
順番にみていきましょう。
正義は信じないよずっと
鳴らす遠吠えのシャッフル
逆さにしたり 裏がえしたり
あげく涙がちょっと
いけない願望も いつか僕らの手で
もう一度 つかまえる
この詞で、もっとも言いたいことは、「遠吠えのシャッフル」ということだと思います。タイトルにも出てきますし、曲の最後も、このワードで終わっています。では、「遠吠えシャッフル」とは、いったい何のことなのでしょう?
私は、政権をシャッフルする、つまり「政権交代」のことだと思います。これの実現が現代日本においては難しいために、遠吠え、というワードがくっついているのだと思います。現実味があまりないのを、嘆いているということですね。
現在の国が「正義」としているものが信じられないので、「政権交代」を「鳴らす」つまり訴えていこう、という詞なのだと思います。
政治の問題というのは「めっちゃ性格のいい人が、めっちゃ考えて、人々のために自分を犠牲にして尽くしまくる」政治家が独裁政治をしてくれれば、たいてい解決するものです。それで解決できた国も、歴史上、少ないながらあります。でも、それを理想としてしまうと、うまくいかないのです。なぜなら、そんな政治家はめったにいないからです。そんな理想的な政治家だと指導者に勝手な幻想を抱き、全部任せてしまって大失敗したのが、ナチスドイツです。
基本的には、政治家は「めっちゃ性格が悪くて、なーんも考えてなくて、利己的なやつ」だと認識するのが、国家を運営する主権たる国民の思考としては、健全なのです。国民は、この悪徳政治家たちをうまく使って、国家を運営しなければいけません。さて、どのようにしたらいいか。
その方法のひとつが、「投票行動」です。投票行動は、ざっくり言えば人事権です。「お前ら舐めたことしてると、クビにするぞ」という脅しです。投票は、誰かを選ぶということですが、同時に、誰かを選ばないということでもあります。投票を放棄するということは、人事権を別の誰かに任せるということになります。投票率が低いことが問題視されていますが、これは国民が国家の運営を放棄しているのと同じです。悪徳政治家は、ゆるゆると私腹を肥やすことに精を出すでしょう。これをさせないように、「お前はクビだ」という強権を振りかざすのが、投票行動なのです。
このように、政権をシャッフルすることで、まだマシな国になる可能性に賭けたい。でも、悲しいかな国民ひとりが持ちうる票数は、1票だけです。地盤看板カバンと言われる通り、組織力や金のある政治家をクビにするのは、とても難しいのです。なので、ここで「選挙にいって国を変えようぜ」というシュプレヒコールは、ただの「遠吠え」になってしまうのです。
ただし、この詞は「いつか僕らの手で もう一度つかまえる」という一文で終わっています。これは政治の腐敗を嘆いている曲ではなく、あくまでも、現状を変えていけるという前向きな曲となっているのです。他の誰かにやってもらうのではなく、一市民である「僕らの手で」つかまえることが重要だと言っているのです。
居場所があんのかわかんねぇ
美しすぎるクニには
シカトされても はぐらかされても
茶碗で飲み干すカフェラテ
ムダな抵抗も 穴を穿つはず
指先で ふれ合える
「美しすぎるクニ」とは、だいぶ皮肉がきいています。この詞が発表された頃は、諸外国に対して「美しい国ニッポン」と思ってもらえるよう、さまざまな政策がとられてきました。が、それはあくまでも外国人旅行者のインバウンドを見越したもので、いわば「金になるから」という側面で行われたものです。一方で、金を生まないながらも、日本に本当に必要とされる文化財や、歴史的価値のあるもの、それを支える人々に対して、必要な支援になっているかどうかは、疑問です。
こういう、美しさの裏側にお金がチラつく国においては、「おれの居場所ってあるんかな?」と思ってしまっているようです。資本主義においては、金を生むことこそが正義なのですが、その物差しで測ることのできないモノもたくさんあるのです。例えば、まさにこの「遠吠えシャッフル」という、スピッツ好きの間でも話題になりにくい曲をせっせと作っているマサムネさんにとっては、考え込んでしまう問題と言えるでしょう。お金を儲けようと思ったなら、マサムネさんなら、ロビンソン量産マシーンと化していればいいのです。ロビンソン、2023年バージョン、とかたくさん作れば、楽して売り上げが上がるかもしれません。が、それをせず、「遠吠えシャッフル」に生命を吹き込んでいるのは、お金とは違う価値観を抱えて生きているからでしょう。だからこそ、お金がすべての「美しいクニ」とは、相性が悪い、と思っています。
とはいえ、それに面と向かって「この国はダメだ!」と声を大にして意見しないのもまた、成熟した大人である証拠です。その心境が「カフェラテ」に表れています。
「カフェラテ」は、黒いコーヒーと、白いミルクから成り立っています。清いことも、汚れたものも、茶碗に入れて飲み干すつもりでいます。
そんな大人な対応を見せるマサムネさんでも、「ムダな抵抗も 穴を穿つはず」と、希望を捨てないでいるのは、この詞の本質なのだと思います。
「カフェラテ」な状況を飲み込みつつも、焦らず、少しでもいい方向にいくように努力する。
政治とは、やっかいな病気なのです。この病気に罹患した国民は、真面目に、病気の治療を試みなければいけません。
でも、病気をすぐに解決しようとして、特効性を求めて、強い副作用のある劇薬を飲みがちなのですが、これは副作用のほうが危ないパターンです。強い薬に逃げた結果、さらに深刻な事態を招いてしまうのです。
また、効果がないからといって薬をやめてしまうのも、悪手です。諦めてしまっては、病気はどんどん進行していくでしょう。
病気の対策としては、刺激の弱い薬を使い、自浄作用を期待して、ゆるゆると改善していくことが大事なのです。あせらず急がず、じっくり向き合うことです。
その、俯瞰したスタンスが、「遠吠えシャッフル」に表現されているのだと思います。
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