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スピッツ「スターゲイザー」は、花形芸能人に憧れる人の話だった説。



こんにちは。八百屋テクテクです。

今回は、スピッツ「スターゲイザー」について解釈していこうと思います。

この詞のタイトル「スターゲイザー」ですが、本来の意味は、天文家とか、天体観測する人、になります。ただ、その意味をそのまま歌詞に代入してみても、あまり意味が通じないところがあるんですよね。いや別に意味なんて通じなくても、フィーリングでいっちゃえば全然オッケーですし、歌詞解釈は聴く人の裁量に委ねられるものですから、天文家という意味のまま詞を強引に解釈しても、なんの問題もないでしょう。

でも、私の楽しみとして、スピッツの歌詞に、何か一貫した意味を見出したい、というのがありまして。それを考えた時、「もしかしたらスターゲイザーのスターって、人気のある芸能人って意味のスターなんじゃないか」と思ったわけです。つまり、花形芸能人の観測者、花形芸能人に強いあこがれを抱いている人、という意味になるんじゃないかなと。

どういうことなのか。詞を順番に見ていきましょう。




遠く遠くあの光まで届いてほしい

芸能人のスターに憧れる人、と言いましたけれど、この詞の主人公は憧れるだけじゃなく、自分もその世界に入ってスターになりたい、と願っている人なんじゃないかなと。なので、「あの光まで届いてほしい」となっているわけです。スターになりたいけどなれない……まだそんな現状なので、スターゲイザーなわけです。スターと呼ばれる道のりが、自分にとってはまだまだ遠く遠くなのです。

自分がアイドルが好きでアイドルを目指しているんだったら、ここでのスターには橋本環奈さんとか平手友梨奈とか、そんなのが当てはまるでしょう。男性俳優なら鈴木亮平さん、佐藤健さん。スポーツ選手なら大谷翔平さん、山縣亮太さんでしょう。2024年現在を生きる人にとって、彼ら彼女らのスター性は、誰もが認めるところだと思います。

デビュー前後の草野マサムネは、誰に憧れていたのでしょう? THE BLUE HEARTSや、たまに衝撃を受けたことは有名ですけど、もしかしたらこの曲は、彼らのことを想って作った曲だったのかもしれません。



ひとりぼっちがせつない夜 星を探してる

明日君がいなきゃ 困る 困る

ここでの夜は、たぶん発表会の前の日の夜のことだと思います。明日は観客が大勢いる状況に立たされるのに対して、今は寝るまでの間、シーンとひとりぼっちで過ごしています。

なにかを発表する時って、自分の中に何かが憑依する感覚ってありますよね。漫画とかでもよく使われる表現だと思うんですけど、ピアノの演奏中にベートーベンが降りてきて覚醒する的な。たぶんこの夜は、自分の中に憧れの人を憑依させるべく、その感覚を探している部分なのだと思います。なので、「明日、ちゃんと俺の中に降ってきてくれよ、でなきゃ困るよ!」と念じているのだと思います。



ゴミになりそうな夢ばかり 靴も汚れてる

明日君がいなきゃ 困る 困る

ここは、夢を追いかけているけれども、先行きが見えない状況を表しているのだと思います。音楽をやっているけれども、全然手ごたえがない。有名になっていかない、仕事がない……そんな状況です。いろいろ頑張って駆けずり回っているので、靴も汚れています。こんなに頑張っているのに、その靴を新しくする金銭的な余裕も生まれません。

明日は、やっと巡ってきた、自分の才能を発揮できるチャンスなのです。こんな時には、神様にでもすがりたい気分になります。自分が憧れたスターにすがって、「明日だけは、自分の肉体を自由に使ってくれていいから、その音楽の才能を貸してくれよ。頼むよ~でてきてくれないと困るよ~」と。

もっともこれは、他力本願という意味ではなく、さんざん練習した上での願いです。靴も汚れるぐらい頑張ったけれど、最後は運頼み、ならぬ、スター頼みです。人事を尽くして、スターが天から自分に降ってくるのを待つ、ということです。



遠く遠く果てしなく続く 道の上から

強い思い あの光まで 届いてほしい

サビでは、発表会本番を迎えています。さっきまでは弱気なあまり、降りてきてくれ~、と願っていましたが、肝心の本番ではハイテンションになってしまって、別のことを願っています。「俺の歌をきけーっ! お前にも聴かせてやるぜ俺の歌を! 俺はこの栄光のロードを歩き続けてやるぜ。そしていつかは遠くにいるお前にも、この歌を届けてやるぜーっ!」と。



すべてを嫌う幼さを 隠し持ったまま

正しく飾られた世界で 世界で

音楽にしろ俳優業にしろスポーツにしろ、ただ能力があればいいというわけにはいきません。自分を売り込むための営業力とか、プロモーターやイベンターに対する交渉力がなければいけません。場合によっては、媚びを売ったり、枕営業だったりが必要なこともあるでしょう。華やかな世界で上を目指していく過程で、イヤでも目に入ってくる純粋ではない薄暗い部分。露骨に嫌うわけにもいかないので隠し持つことにしますが、本音では、すべてを嫌っています。

すべてを嫌う幼さが、自分にとって必要だと思えたからです。



一度きりの魔球を投げ込む 熱の向こうへと

泣いて笑って泥にまみれた ドラマの後で

ここもまた、発表会本番です。「一度きりの魔球を投げ込む」は、ステージに立った自分が超本気の一撃を、熱気にあふれた観客に向かって投げつけた場面です。自分の才能やら運やらを魔球に込めて、わきめもふらずに投げる。憧れたスターのモノマネからはじまった自分の人生だけれど、この一球だけは、自分という人間が何者なのかを知るために、自分の手持ちだけで勝負した、魔球なのです。

その結果が、「泣いて笑って泥にまみれた」となっています。



明かされていく秘密 何か終わり また始まり

ありふれた言葉が からだ中を巡って翼になる

彼のステージは成功しました。ステージの上から見上げた景色を眺めて、彼は悟ったのです。「スターになるって、こういうことだったんだ」と。

自分が憧れたスターと同じ視点に立つことができてはじめて、スターの気持ちがわかった部分じゃないかなと。この気持ちこそが「秘密」であり、彼がもっとも知りたかったことなんじゃないかなと。そして、それが今、明かされました。

この秘密を彼が知ったことで、「何か終わり また始まり」ました。一方的に憧れていた人生が終わり、アーティストとして自立する人生が始まったということです。観測するだけの立場だったスターゲイザーが終わり、星を追い求めるスターシーカーとしての人生が始まる、のかなと。

「ありふれた言葉」とは、「ステージ素敵だったよ」とか「応援してます」とか、そういう言葉たちなのかなと。心のこもらない美辞麗句ではなく、心のこもった「ありふれた言葉」こそが、彼の心を打つのです。彼はステージの上で、観客から投げかけられる「ありふれた言葉」をからだ中で吸収しています。それがやがて彼の、スターとしての高い階段を上っていくための翼になるのです。




という感じで解釈してみましたが、いかがでしたでしょうか?

もし、草野マサムネがこの解釈どおりのことを考えていたとするなら、妄想が膨らみますね。「ありふれた言葉」は、私たちファンが想像している以上に、アーティストにとって大きなものなのかもしれません。「草野マサムネの偉大なる功績」などと美辞麗句で自分たちの活動を称えられるより、「キャーステキー!」みたいに心がこもった正直な言葉のほうが、響くのかもしれません。また、マサムネさんが憧れていたスターがいたとするなら、いったい誰なのでしょう? THE BLUE HEARTSや、たまはもちろんですけれども、なにも音楽業界のみに思考をとどまらせていたわけではないと思うのです。アイドルも俳優もステージに立つという意味では同じですし、人を惹きつける魅力があるのは確かです。それに憧れていたとしても不思議ではないでしょう。

マサムネさんがスターゲイザーしていた、あるいは、現在もしている人間は誰なのか。もしかしたら、このブログを読んでいるアナタが、光り輝いているアナタが、対象であるかもしれません。




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