こんにちは。八百屋テクテクです。
今回は、スピッツ「オケラ」について解釈していこうと思います。
この曲は、なんだかギャンブルのことを表現しているようにも思えます。有り金を全部使ってしまって、すってんてんになっている様子のことをオケラと表現したりしますが、まさにギャンブルで有り金をはたいてしまった人の話なのかなと。
とはいえ、短めにバット持ってエグすぎるスライダー打ち返す、とありますとおり、自分の力でどうにかしようとしている部分もあったりします。丁半バクチみたいなギャンブルは完全に運なので、そんな要素が入り込まないんですよね。イカサマに全力を尽くすというなら話は別ですけれども。
ここは、「運任せで、勝ち目がなさそうな賭け」でありながらも「自分でどうにか頑張ることで道は開けそう」な物がないかどうかを探してみましたところ、ありました。「無謀な起業にチャレンジ」というシチュエーションです。
私もサラリーマンから自営業に転職したクチなので、このへんの話は実によくわかります。
いや、私のメガネを通してみると、オケラはドンピシャに当てはまったので、私の中でそうなりました。本当は違うことを言ってるのかもしれませんけれども、私にとっては、そうとしか捉えられない詞なのです。
というわけで、今回はこの詞を、「無謀な起業にチャレンジする人の話」として、読み砕いていきたいと思います。
もっと自由になって蛾になってオケラになって
君が出そうなカード めくり続けてる
しょっぱいスープ飲んで ぐっと飲んで涙を飲んで
開拓前の原野 ひとりで身構えてる
サラリーマン時代は、自由なんてありませんでした。会社に言われたことをやり続けることがすべてです。ハムスターの回し車みたいに、檻の中でひたすら回し続けることを求められます。
でも、起業というのは、まったく働き方が異なります。無理やりにでも「もっと自由に」なることが求められるのです。この無限に続くような自由の中で、どんなものにでも挑戦し、自分の成功パターンを発見し、継続していかなくてはいけません。
「蛾」は、虫へんに、我という字です。我を貫く、という使い方をするように、我という字には、強い自分の欲求という意味があります。これは、事業でやりたいことを実現していくためには、絶対に必要な要素になります。
一方で、今回の曲のタイトルになっている「オケラ」
この詞がもし、起業家の性質そのものを問う曲だったのなら、タイトルは「蛾」になっていたでしょう。でも、そうではなく「オケラ」になっています。これはいったい、どういうことでしょう?
起業において「オケラ」は、「蛾」の逆だと思うのです。お金がなくて、切羽詰まった状態のことを指しているのだと思います。オケラは、すってんてんの状態を表していますが、起業において、すってんてんの状態とは、大赤字で倒産寸前、自己破産寸前の状態になることを指します。
つまり、この曲は、倒産寸前になっている人に焦点を当てた話なのです。
事業が手詰まりになって、倒産寸前になって、ヤバいヤバいヤバい…なんとかしなくちゃ…! と焦りまくる一方で、思考が四六時中グルグルと高速回転していて、めちゃくちゃ精神が研ぎ澄まされているという状態。これが「オケラ」なのです。
「君が出そうなカード」とは、君を幸運の女神のカードに例えた、事業の突破口のことだと思います。大口の取引が決まるとか、銀行から追加で融資が下りるとか、そういうことだと思います。
飲みたくもない、しょっぱすぎるスープを飲んで、涙もこらえて、新規事業という「開拓前の原野」を前に、絶望に似た感覚で佇んでいる様子です。希望を抱いて飛び込んできたはずなのに、新天地でオケラ状態になってしまい、軌道に乗せる目途もたたず、どうしたらいいんだ、なんでこんなことになってしまったんだ、と頭を抱えているのが、この部分なのだと思います。
本当に必要かどうか そぎ落していって
残ってたものは 身体だけ
苦しみ乗り越えて 新たな場所へ
月のあかりで 生き延びる
この部分は、リストラです。自分を信頼してついてきてくれた従業員さんとか、昔から仲良くやってきた仲間たちとの雇用関係を解消しなくちゃいけなくなった場面です。このほか、今までコツコツ積み上げてきた会社の設備や車両、土地、そのほか、売却できるものはすべて売却していった結果、残ったのは、自分の身体だけ、という事態になりました。
とてもつらいですね。でも起業家を志したなら、この苦しみを乗り越えなくてはいけません。この苦しみの先に、「新たな場所」があるのです。サラリーマンの道から外れて「もっと自由になる」とは、そういうことなのです。
もっと自由になって蛾になってオケラになって
前金でって言うんで 諦めかけてた
崇高なる願望 ちょっと妄想 遅れて行動
だってそれしか無いし シカトされつづけても
起業家の99%は、普通の人です。所詮は凡人なのです。誰もがスティーブ・ジョブズであるはずがありません。パイオニアにもなれませんし、イノベーションを起こせません。
融資をしてもらおうと銀行の窓口を尋ねても、それが起業したての場合は「ふーん、前の職業はこうだったのね」と、今までやってきた仕事でしか評価をされません。あるいは、自分の親の財産や仕事など、自分を担保してくれる人について詳しく聞かれることになります。つまり、自分のやる気や能力といったものについては、考慮されません。まあ当たり前といえば当たり前なんですけど、「僕は、やる気があります!」という発言だけを信用して、ホイホイお金を貸してくれる銀行がいたとしたら、めっちゃ怖いですよね。
まあつまり、起業したての、実績がない人というのは、信用もないということです。この信用がないと、銀行からお金を借りることができず、結果、大きなお金を動かすことができません。取引先と契約を結ぼうにも、「アンタのところは、前金制ね」と言われてしまいます。仕入れとして取引先に支払うお金は前金なのに、自分の懐に売上が入ってくるのが翌月または翌々月としたら、手元にキャッシュがない状態が常に続きます。これは辛いですね。この状態で顧客にトンズラされたら、連鎖倒産しちゃいます。こんな危ないことはありませんよね。なので会計的に「諦めかけてた」というのも、十分納得できる話です。
「崇高なる願望」とは、起業家に当てはめるなら、社会に役に立つ会社を作ろうということになります。「ちょっと妄想」は、いずれ成功して大金持ちになろう、ということです。
でも、その願望や妄想を打ち砕く現実が「遅れて行動」になります。起業家として成功するには、パイオニアである必要があるのです。イノベーションをおこす必要があるのです。でもそんな優れたアイディアなんて、凡人の頭の中から出てくるはずがありません。凡人は常に、天才の後に「遅れて行動」するのです。凡人が倒産を乗り越えて頑張ったとしても、せいぜい、自由になることぐらいでしょう。
「だってそれしか無いし シカトされつづけても」と、最後ふてくされています。彼が起業して、努力の末に仕上げた製品は、しかしながら、いまだ、大勢の人たちから「シカト」されている状態で、支持を集めることができずにいるようです。
聞こえる 聞こえる 風に乗って
起業して、大赤字という事態に直面すると、精神が研ぎ澄まされることは確かです。
「オケラ」になって、はじめて、聞こえてきた声があるようです。
有名な起業家には、必ず、倒産の危機に直面したエピソードがあります。これを乗り越えることで、強くなってきたのです。
凡人の自覚なんて 無さそうにふるまって
派手にコケたり するけれど
短めにバット持って 期待裏切って
エグすぎるスライダー 打ち返す
最初のほうで少し触れていますが、起業とは、ギャンブル的な要素もありますが、自分の才知が試される場所でもあります。おのれのすべてをかけて、取り組んでいかなくてはいけません。
人とは違う、と思い込んだ凡人が行き着く先は倒産です。派手にこけたりします。凡人が全力でやっても、どうにもならないのが起業です。そして、どうにもならなかったとき、凡人には何も残らないのです。
それでも、自分にやれることを、少しずつでもいいからやっていくことが大事です。できる分だけやるしかないのです。「ホームラン売ってやる」と豪語しておきながら、ピッチャーゴロしか打てないのが起業では普通です。そのぐらい、自分に向かって飛んでくる球はエグすぎるのです。だけどその状況に腐らず、ホームランを打てないなら短めにバットを持つように修正して、とにかくバットに当てて打ち返すことに努めるべきです。凡人には凡人のやり方で、自分の願望を貫いていくことが必要です。ホームランは打てなくても、送りバントも立派な仕事です。送りバントという小さな仕事をこなすために、自分のすべてをかけるのです。それが、この詞の言いたかったことなんじゃないかなと、思います。
あああああああ。
なんか自分で言っててなんですけど、胸が苦しくなりました。自分がこのとおりできているかというと、違うような気がします。
マサムネさんに「君は八百屋さんだろう?」と視線を向けられると、ちょっと物陰に隠れてしまいたくなります。社会に貢献している立派な八百屋さんでもありません。ひとを雇えるほど稼げてもいません。送りバントどころか、楽な試合ばかりをこなそうとしています。エグすぎるスライダーなんて打てないに決まっているので、はじめからそんな球が飛んでくるような場面に立たないで、もっと楽な試合に出ている。そんな感じです。勝負を避けているのです。
勝負を挑んで失敗するのが「オケラ」なら、私はまだオケラにすらなれない、なんか小さな虫です。私が、もっと勝負に出るような実力がついたときになった時、この詞の意味が本当の意味で、実感できるのだと思います。
はたして、いつになるのやら。
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