こんにちは、八百屋テクテクです。
今回は、スピッツ「たまご」について解釈していきたいと思います。
この曲は、ちまたではエロい曲だとされています。「たまご」は卵子を表していたり、歌詞の中に出てくる「バナナ」は男性器のことだったりと、比喩的、直喩的なエロ表現が散りばめられています。
とはいえ、「たまごはエロい曲です!終わり!解散!」で終わるつもりはありませんので、どうぞご安心ください。むしろこの曲を聴いて、エロのみの解釈に留まっているのは、あまりにも惜しいと思うんです。この曲にて、マサムネさんがもっとも言いたかったことは、「バナナ=男性器」ということではなく、エロのもっと先にある、「はじめて感じた宇宙・タマシイの事実」なのだと思うんです。そのぐらい、壮大な曲だと、私は思うのです。
この曲は、しかしながら、エロとは切っても切れない関係にありますので、多く触れていくことになります。今更ですけど、エロが苦手な方はここでお別れです。次のブログでまたお会いしましょう。それでもいいよ、という方は、どうぞお付き合いくださいますと幸いです。
この八百屋さんと一緒に、「たまご」のすごさを、見ていきましょう。
からめた小指で 誰も知らない約束
たまごの中には いつか生まれ出すヒヨコ
君と僕のおかしな秘密
ブログ冒頭でも述べましたとおり、ここでの「たまご」は、女性の中にある卵子のことだと思います。こう定義すると、「じゃあ、からめた小指で誰も知らない約束って、小指だけじゃなく、身体のいろんな部分をからめるエッチシーンのことじゃないか!」と勘のいい方は想像すると思います。うーん、そうですね。私も、そうだと思います。
私が問題にしたいのは、次です。君と僕の「おかしな」「秘密」となっています。なぜ、「おかしな」「秘密」なのでしょう?
性行為そのものに関しては、「おかしな」「秘密」にはなり得ないと思います。「あの肉屋の兄ちゃんと、花屋の姉ちゃんが付き合ってるんだって~」なんて内容、まあ付き合うのは自然だと思いますし、そもそも誰も興味ないですよね。嘲笑されるほどの価値も、秘密にしておくだけの価値もない話なのです。ウブな学生同士ならまだしも、「たまごの中には いつか生まれ出すヒヨコ」をわきまえている成熟した大人同士だったなら、性行為は、「おかしな秘密」にはなりにくいのです。わざわざ言いふらされるような内容でもないし、固く心の中にしまっておくような内容でもない。週刊誌がスキャンダルを追いかけているトップアイドルとかならまだしも、たいていの人にとっては、その程度のものなのです。
でも、この、ただの性行為を「おかしな」「秘密」としています。ここが、本当に重要な部分だと思います。これについては、またあとでじっくり出てくるので、その時にまた触れます。
また、これものちの詞の内容になりますが、「はじめて感じた宇宙・タマシイの事実」を、そもそも、性行為で感じることがあるでしょうか? たぶん、普通に性行為していたのでは、ないと思います。たびたび例に出して大変申し訳ないんですけど、肉屋の兄ちゃんと花屋の姉ちゃんが性行為していたとして、彼らの脳みその中に、宇宙とかタマシイの事実とかが、思い浮かんでいるでしょうか? ハタから眺めた限りだと、そうは思えないですよね。性行為の相手が、高年収のキャリアウーマンになっても一緒です。不動産鑑定士でも、社会保険労務士でも一緒です。誰が来ても、宇宙なんて感じることはないでしょう。
でも、この詞の中の出来事により、マサムネさんは、確かに性行為で、宇宙を感じていました。
それを感じるカギは「君と僕のおかしな秘密」にある、と私はにらんでいます。
私が何を言っているのか、今はさっぱりわからないかもしれませんが、詞を順番にみていくと、だんだんわかるようになってきます。
もう少し我慢して、お付き合いください。
バナナ浮かぶ夜は 涙こらえて
下手なピンボールだって 味方につけた
削られるたびに 憧れたピストルが
ハデに鳴り響く
バナナは、男性器のことだと冒頭で申し上げました。これから性行為をする場面なのだと思います。でも同時に「涙こらえて」います。今はすべてを投げ出して泣き出したいヘビーな気分だけれども、それを我慢して、性行為をしなくてはいいけない場面に出くわしてしまったのだと思います。
「ピンボール」は、金属製の玉のことです。つまり陰嚢のことだと思います。陰嚢は、遺伝子を生成する臓器です。これが「ヘタ」とのことです。つまり、自分の遺伝子は、ひとと比べて劣っている、と思っています。が、性行為が目の前で始まりますともなれば、「いやぁ、私のような劣っている人間の遺伝子は、残さない方がいいと思うんですよね…」なんて拗ねている場合ではありません。こんな劣った遺伝子を作る臓器でさえも、味方につけて、頑張らなければいけません。なんてったって性行為ですから。性行為においては、この臓器は主役みたいなもんです。
「削られる」とは、精神が削られていることを示しています。「憧れたピストル」は、憧れのロックバンドのことだと思います。「ハデに鳴り響く」のは、憧れのロックバンドの曲がヒットしたことを表しています。
アルバム「空の飛び方」がリリースされた当時といえば、マサムネさんの精神はズタボロでした。何を歌っても、何を演奏しても、CDの売り上げに手ごたえを掴めずにいました。寝食を惜しんで、必死になって書き上げたシングル曲は、自分が思うような結果にはなりませんでした。他人の評価や、客観的な数字はどうあれ、マサムネさん自身は、「まったく売れてないわ」と思っていたのです。
その一方で、憧れのロックバンドたちの曲は、新曲がリリースされるたびに、バーン!バーン!と売れていきます。そんな状況に出くわすたびに、ゴリゴリと精神が削られていたのです。
こういう状況で性行為に誘われても、キツイですよね。普通なら、「今はそんな気分じゃないから、また今度にしようよ」と断ると思います。
でも、それでもこの時ばかりは、自分を奮い立たせて、性行為をしなければいけなかった。「涙こらえて」、「ヘタなピンボール」でもあえて、彼女の好意に応えなければいけないと思ったのです。
さかずきのテキーラ 願いをこめて
死にかけたマシンで はじき出された
君はこの場所で ボロきれみたいな
僕を抱き寄せた Oh yeah
「さかずきのテキーラ」は、勝利の美酒のことだと思います。しかも、飲めば必ず酔いほどの、強い快楽のお酒です。これが、喉から手が出るほど欲しいと、マサムネさんは願っています。これは、自分の楽曲がヒットチャートに載ることですね。
でも、この時のマサムネさんは「死にかけたマシン」でした。自分で好きなようにやっても売れず、他人からアドバイスされてやっても売れずで、方向性も見えずただただ曲を書き続ける、マシンのようになっていました。こんな心のブレた状態では、当然、強豪がひしめくヒットチャートから、はじき出されてしまいます。
そんな、誰からも見向きもされない(と思っている)マサムネさんのことを、抱き寄せてくれた女性がいました。
自分に自信がなくて、精神がズタボロになっていて、ヘビー押しつぶされそうな自分を、「私は、アナタの才能を信じていますから」と抱き寄せてくれたのです。
からめた小指で 誰も知らない約束
たまごの中には いつか生まれ出すヒヨコ
君と僕の不思議な秘密
「からめた小指で 誰も知らない約束」が、「ボロきれみたいな僕を抱き寄せた」ところから繋がっていることを踏まえると、ここは指切りげんまんをしていることが伺えます。世の中の誰も、マサムネさん自身でさえも、マサムネさんの才能を信じていなかった中、目の前の彼女だけが、マサムネさんの才能を信じていたのです。彼女はマサムネさんに対して「アナタは、天才です。そして、絶対に才能が認められる日がきます」と、薪をパーンと割るかのように断言したのでしょう。「私は、そう信じているから。売れる日まで、絶対、音楽活動を諦めないでね。私との約束だから」と、小指を差し出してくれたのが、この場面なのではないのでしょうか。
もちろん、これは言葉だけのものではありません。彼女は、マサムネさんを信じている証拠に、自分の身体を差し出してくれたのです。からんだ二人の小指は、薬指、中指と繋いでいって、そのまま身体の深い部分へと求めていくことになったのでしょう。
言葉だけなら、誰でもなんとでも言えます。私たちは選挙活動中の政治家が、「この国を変えて見せます」と叫んでいるのを、幾度も目にしています。その政治家に笑顔で握手を求められたら、私たちもまた「応援しています」と、心にもないことを述べます。それがいわば大人の礼儀だからです。礼儀は、ひとを、嘘つきにすることを許します。
この、落ち込んでいるマサムネさんを前にした場合も同じです。「アナタには才能があります」と、誰もが言うでしょう。そう思っていても、思っていなくても。それが礼儀というものですから。なので、慰めの言葉は、マサムネさんにとっては空虚でしかなかった。礼儀として発せられた言葉は、あくまでも礼儀として受け取るしかないのです。「アナタには才能があります」と舌先三寸で言われても、はいそうですか、と納得するような単純さは、持ち合わせていなかったのです。
でも、「信じています」という言葉とともに、自分の裸体を差し出してきたら、とうでしょう? これは、びっくりしますよね。いくら天邪鬼なマサムネさんでも、口先だけではない、と思うはずです。
目の前の彼女は、本当に自分の才能を信じてくれていて、自分を慰めようとしてくれている。これは、落ち込んでいる場合ではありません。彼女の期待に、応えなければいけません。
この一連の心の動きが、上記で長々と述べてきましたことに、結びついていると私は思うのです。
はじめて感じた宇宙・タマシイの事実
たまごの中にはいつか生まれ出すヒヨコ
君と僕のよくある…
さて。性行為についてです。性行為とは、通常、信頼できる人と行うものです。では、信頼できる人とは、どういった人なのでしょう?
以前ツイッターで、「男性の将来性偏差値表」なるものが出回っておりました。この職業についている人と付き合えば、幸せになれるという目安を示したものだと思います。有名会社経営者や医者、都会の地主が高偏差値で、公務員、銀行員、商社マンなどが続きます。私たち八百屋さんや魚屋さんは残念ながら標準以下の偏差値でしたが、このさらに下に表記されているのが、売れないバンドマンでした。当時はツイッターなど存在していなかったし、こんな表もまた存在していなかったのですが、でもそういう認識自体は存在していました。「売れないバンドマン」の将来性のなさは、現状がわかる本人だからこそ、痛感していたのではないのでしょうか。
マサムネさんはこの「たまご」を制作している時点では、まだ売れてもいない、将来性が見えない、有象無象のバンドマンの中のひとりでした。
そんな、自他ともに認める将来性のない男、マサムネさんに対して、「アナタには才能があり、今後絶対売れます」と信じてくれて、身体まで預けてくれる女性がいたとしたら、どうでしょう? 女性は、お金があるから、安定があるから、将来があるから、男性に身体を許すのです。ない人には、身体を許してはいけません。そう教えられてきたはずです。なのに、現状何もないマサムネさんに対して、心も身体も預けてくれる。こんな、人間がつくった常識や道義に当てはまらないようなことが、目の前で起こっているのです。金や安定、将来といった、人が作ったものを度外視した、その先に、この女性の裸体がいたのです。
この女性と、心と身体を通わせたことで、「はじめて感じた宇宙・タマシイの事実」を、マサムネさんが感じたのではないかなと、私は思うのです。
性行為という、男女の間ではよくある行為ではありつつも、君と僕との間に関しては、同時におかしな秘密であり、不思議な秘密でもあったわけです。
という感じで解釈してみましたが、いかがでしたでしょうか?
繰り返しになりますが、この詞を、ただのエロい曲として解釈されるには、あまりにも勿体ないなと思うのです。いやもちろん、この解釈は私の勝手な妄想なので、そう解釈してくれるかどうかは、ひとによりけりなところがあります。私自身は、この解釈は、めちゃくちゃいいと思っています。
マサムネさんは通常、なまの人間の機敏についてをテーマにしているような気がします。ごくごく普通の、ごくごくありふれた感情や感覚を、私たちに見せてくれます。なので、私たちにも理解しやすく、すっと胸の中に入ってくるのだと思います。
でも、この「たまご」は、マサムネさんが経験した、マサムネさんの胸の中にしかない感情なのだと思います。「はじめて感じた宇宙・タマシイの事実」は、それを経験したマサムネさんにしか、理解できない感情なのかもしれません。
だからこそ、それを曲にしてくれたことは、ありがたいことだと思うのです。聴している私たちもまた、その感覚に触れることができるんじゃないかなと思います。
そういうふうに思えたなら、めっちゃ大事にしたい曲だと思うのです。
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